■子育てはナンバー・ワンよりオンリー・ワンで■

子育てとは
 子育てについては多くの児童心理の専門家の方々が意見を述べられております。また、子育ては多くの人が経験していることなので親の数ほど子育てについての考え(意見)があります。親というものは、つい自分の子育てを周りと比較して悪く評価しがちです。学問は学校へ行ったり、本を読むことで学ぶことが出来ます。しかし、子育ては実際に体験し、それを各自の感性で理解して積み上げていくものではないでしょうか?兄弟でも一人ひとり個性があり、子育てはオンリー・ワンなのです。

 親に知識があり、教養があるからといって子育てに対する感性が豊かになるというものではありません。子育てを体験するようになって、つくづく今まで学んできた学問や理屈だけでは対応しきれない世界があることを知ることになります。このことが、育児不安となり色々な悩みがおきる原因のひとつなのかもしれません。また、子どもの病気は突然で予測がたちません。仕事との両立などでイライラがつのるかもしれません。その時は遠慮せず周囲に積極的に助けを求めましょう。子育ては思い通りにならないことも多く、長いスパンで考えたほうがいいでしょう。

 何事も「ほどほど」が子どもにとっていいようです。物が豊かになると子育ては難しくなります。子育ての喜びと悲しみを知ることで、心の目がひらき世界はぐっと広がることでしょう。
「ちえ熱」の現代的な考え方とその対応
 ちえ熱は、熱が出るから知恵がつくのではありません。これは、社会的な多くの通過儀礼と同じように、成長するためには避けて通れない病気という意味と考えます。

 私が小児科医になった頃、子どもの時にかかるべき病気というのがたくさんありました。はしか、風しん、水痘、おたふくかぜ・・・などです。つい30年位前までは、はしかは日本では「命さだめ」、フランスでは「子どもの自慢ははしかがすんでからするように」と言われるほど子どもにとっては重い、そして必ずかからなければならない病気でした。

 最近これらの病気はワクチンによって防ぐことができます。しかし、昨今の免疫学の研究によりますと、病気をすることによって、身体の免疫系統の働きが鍛えられるのだそうです。ワクチンのない軽い病気は子どものときにすませて、免疫系を鍛えることも重要なことです。昔のようにひどい感染症は少なくなりましたので病気をすることを恐れることなく、感染することによって子どもが成長していくのだ、と考えることも大切です。

 同じ病名であっても、子どもの体力や合併症の有無などによって経過が違い、その子どもに適した治療が必要になってきます。医療を「平均」で扱うのではなく「個別性」を大切にしなくてはなりません。特に物言わぬ子どもには、その子の「個別性」がわかるかかりつけの小児科医を決めておくことをお勧めします。

 重症の病気が少なくなっているとはいえ、全く無くなっているわけではありません。風邪と思っていても急変することもあるので、子どもを見守る小児科医は常に苦労はたえません。それ故、今は全国で問題になっている休日・夜間小児救急医療を熊本市の小児科医は20年も前から全国に先がけて実施しています。

老小児科医から3つのアドバイス
  1. 子どもを自由にさせるというのは、したいことをさせるということではありません。やるべきことをさせるということです。

  2. アイデンティティのある個性豊かな個人を育てることが求められています。しかし、「おかげさまで」という感謝の気持ちを忘れないように育てましょう。

  3. 自然を畏れ敬う気持ちを幼児の時から教えてあげてください。最近の一部の小・中学生のようにならないために、心にゆとりと豊かさを与えるサムシング グレイト(Something Great)が子育てに必要ではないかと考えます。古来より言われている「何をするにもお天道さまが見てらっしゃる」という考えと共通する感性でもあります。

子どもは親の分身です。良かれ、悪しかれ、成長して生きつつあります。親としてまるごと愛さねばなりません。

(わかりやすい育児メモ.第15版より.抜粋・改編)