―股関節超音波検査(エコー検査)による早期診断-
先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)とは赤ちゃんの脚の付け根の股関節が外れている状態ですが、「痛そう」「歩けない」というイメージを持たれる方が多いようです。
しかし、これは誤った認識です。
外傷による脱臼とは異なり、乳児股関節脱臼では関節包(関節を包む袋)や靭帯、軟骨などが出生前から正常とは異なったゆるんだ状態のため、
先天性股関節脱臼の赤ちゃんは股間節を痛がらず、1歳過ぎるころには歩くことができます。(ガチョウが歩くような変な歩き方になりますが)
一般に股を開けないことが診断の特徴と言われていますが、しっかり股を広げることもできる赤ちゃんもいるため、診察だけでの診断は容易ではありません。
また、この病気は乳児期早期に診断すれば、装具で治すことができますが、1歳過ぎて診断されると治療には大掛かりな手術が必要で、その後も定期的な治療が必要になります。
小児整形外科学会が行った先天性股関節脱臼の全国調査(1295例)で1歳以降に脱臼と診断されたのは15%(199例)であり、1例を除く全例が公的乳児健診を受けていました。
(乳児健診時の診察のみで疑うことの限界があることがわかりました。)
乳児健診では、私たち小児科医が体重増加、運動発達など小児科的なスクリーニングと股関節を含めたその他の疾患のスクリーニングを同時に行うことが一般的です。
健診の場で小児科医が股関節脱臼を疑わないと整形外科等での精密検査が行われないため、見逃してしまうことがあります。
診察で股関節脱臼を見逃さないために、全国調査の結果を踏まえて、股関節脱臼を見逃さないようなシステム作りが求められています。
先天性股関節脱臼の危険因子として①女児(89%)②家族歴(27%)③骨盤位分娩(15%)、④太ももやお尻のしわの左右差、⑤足の開きが悪い
、が指摘されています。
この5項目のうち①~④の2項目以上が陽性の場合、または⑤が陽性の場合には精密検査が推奨されています。
当院では上記の項目が認められるような股関節脱臼が疑われる患者さんに積極的に股関節の超音波検査を行い、先天性股関節脱臼の早期診断に努めております。
また、先天性股関節脱臼は、日頃の赤ちゃんの抱っこの仕方を工夫することで予防できることも知られています。
ご不明な点がございましたら、スタッフまでご相談ください。
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